二日めのカレーライス13
「鷹野先生、本日はお越しいただきまして誠にありがとうございます。本来であれば先生にも一言お言葉を頂戴したいところではありますが、予想を超える出席者でありまして・・・」
灯影舎出版社株式会社 代表取締役社長の満島彬が声をかけてきた。
「お気になさらず、本日は誠におめでとうございます。」
俺も出版社の社長から“先生”と呼ばれるようになったらまぁまぁかな。
そんなことを考えながらニヤニヤしているところに三輪茜がやってきた。
「先生、今度新しい雑誌を創刊するって話、しましたよね!」
「あぁ、聞いたよ。 医療系の雑誌だったかな?」
「はい、最新医療から健康に関わる様々な情報を専門化し過ぎず、大人から子供まで楽しめるコンテンツを盛り込んだ雑誌というのがコンセプトなんですが、その中で灯影舎出版の作家先生と医療従事者の方との対談ページを差し込もうと思っています。その第二回目を鷹野先生にお願いしたいんですが・・・」
「受けていただけますか?」
第一回目の作家先生が誰なのか気になるところではあったが聞くのはやめた。
「勿論台本はこちらで作りますので先生にはお手間は一切取らせません。」
「医療ねぇ、あんまり詳しくないけどいいの?」
「大丈夫です!」
「相手の医療従事者の方はもう決まっているの?」
「それも含めてこれからです。編集長には鷹野先生に承諾をいただいたと報告しておきますね!」
「本田くん、今いいかね?」
大阪医科大学総合医療センター 脳神経外科部長の森尾教授が声をかけてきた。
「はい!」
「例の件、考えてくれたかね?」
「すみません、まだ結論を出せていません」
「現場からは少しの間離れることになるが、世界脳神経外科学会連盟のオランダ本部で研修部門の責任者をするということは、君にとって決して悪い話ではないと思うんだがね」「君を推薦してくださった第四代会長の杉山良二教授の顔を潰さないよう、くれぐれもよろしく頼むよ」
柚子は軽く会釈をし、遠ざかっていく森尾の後ろ姿を見送った。
「ふっ!」溜息が漏れた。(つづく)