二日めのカレーライス19
六時間に及ぶ手術が終わった。
一般的に急性硬膜下血腫の手術をした場合の死亡率は65%と高く、社会復帰できる人は18%と報告されている。十二歳の子供に“社会復帰”という言葉が妥当かどうかはわからないが、少なくともりくのこれからの人生が大変なものになるであろうことは口に出さずともその場にいた誰もが直感的に感じ取っていた。
「よかったな、浩太!」
「悪かったな、お前まで呼び出したりして!」
「しばらくは心配な日が続くと思うが、今はりくの回復を信じよう!」
「ありがとう!」
高野が自宅に戻ったのは夜中の二時を少しまわっていた。
翌日、高野は柚子に電話を入れた。
「りくのこと、ありがとう!」
「できるだけのことはやったわ!」
「あとはりくくんの気力次第ね!、あ、医者の私がこんなこというのはおかしいかもしれないけど・・・」
「柚子にはほんと感謝してるよ!」
「でも、初めて見たよ、浩太のあんなに消沈した姿!」
「無理もないわよ、それに大好きなバスケットボールでの出来事だもの」
「りくのこと頼むな!」
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高野コンストラクション専属バイク便スタッフの新海龍は大阪でも指折りの大型書店順久堂書店にいた。
龍の休日はいつもこの順久堂書店から始まり、めぼしをつけていた小説を二、三冊買って書店近くの喫茶店で四、五時間読みふけるというコースである。
この日龍が買った小説はSFもの一冊に、恋愛小説一冊、そして小説ではないが建築設計関係の専門書であった。
専門書を読むことはないのだが、先日の高野コンストラクションでの出来事以来、川口陽(?)のことが気になっていた。読んでも意味などわかるはずもないと思いつつ、彼女がどんな仕事をしているのか知りたくなったのだ。
喫茶店に入るや否や分厚い建築設計関係の専門書を開いてみた。やはり何が書かれているのかもわからない。興味本位で買ってしまった本の4200円を悔やみつつ、とにかく最後まで読んでみようと龍は思った。いつもなら二冊は読み終えるのだが、彼女と何等か接点をつくりたいという一心で文字を追ったがこの本に限っては半分も読み進めることができなかった。
「ゆっくり読もうか!」
龍は晩飯を食って帰ることにした。(つづく)