DonAltobelloのブログ

アルトベッロのもの書き人生

陽下の法典(20)※中編ミステリー

 

(20)の出演者 ※妄想

向田直哉(刑事):鈴木亮平

与儀 玄(公安職員):井浦 新

 

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桜田門の角地にそびえる警視庁を右に折れると右手前方に外務省が見えてくる。その手前を右に入りすぐが警察庁である。

向田が向かったのは警察庁警備局外事課であった。

同じ警察組織でありながら所轄刑事が警備局、つまり公安に出向くことなどまずないことであった。しかし、武蔵小杉焼殺事件が意外な展開を見せ始め捜査の行方次第では所轄の手を離れることも想定しての今回の情報連携であった。

 

「神奈川県警の向田です。与儀さんいらっしゃいますか?」

 

 

 

 

 

向田はかなりの時間待たされることになった。警察組織の関係性を考えると所轄など公安からすればぞんざいに扱うべしという空気がありありと感じられた。

40分ほど過ぎた頃ようやく会議室のドアがノックされた。

 

 

「直哉、悪い悪い!」

「さっき戻ったところだ!」

 

〔不在の状態で待たせたのか! ばかにしやがって!〕

 

「忙しいところすみません。」

 

「いや、いいんだ!」

「おじさん元気か?」

 

「ええまあ、それなりに。」

 

 

向田と与儀は歳が四つ違うが、家も近く独りっ子だった向田は与儀を兄のように慕っていた。与儀が大学を卒業してからは会う機会が少なくなり、そのうち向田も仕事に追われるようになった。

 

「懐かしいな! おじさん、俺に“玄、本を読めよ! 本は必ずお前を助けてくれるからな!”って言って、会うたびにお薦めの本を俺に渡すんだ!」

 

「親父、俺と違って読書家だから!」

 

「そうそう、お前の“直哉”って名前志賀直哉からもらったって言ってたな。」

 

「名前負けしてるけどね。」

 

「おじさんから薦められた志賀直哉の『范の犯罪』、俺何度も何度も読み返したよ!」

 

「ところでどうした?」

 

「ええ、ちょっと聞いてほしい話があるんです・・・・」

 

 

 

 

向田は武蔵小杉焼殺事件の詳細と捜査状況を克明に話した。そして、世威羅連邦がこの事件に何らかの関わりを持っているのではないかと言うアブダクション(仮説的推論)を最後に付け加えたのである。

 

向田の説明を聞き終えた与儀は腕を組んだまま目をつぶって考えていた。

 

「世威羅連邦はここ数年で軍事力を急激に拡大している。現在我々が確認している日本に潜伏している世威羅連邦の特殊工作員、諜報員の数は数十人に及んでいる。しかもここ二年余りで5倍以上に増えている。日本人の通謀者を含めると数百人にのぼると言われている!」

 

「何をしようとしているんですか?」

 

「武力をもって我が国を侵略しようとしている可能性がある。」

 

「まさか!」

 

「軍事力では我が国の方が勝っているが、奴らは外と内の両方から仕掛ける気だ!」

 

「外と内?」

 

「先日匿名でこんな情報提供があったんだ。」

 

「外務省職員・・・・」

 

「驚くことじゃない!」

「日本人の通謀者は外務省、経産省総務省国交省、そして・・・・」

 

防衛省に入り込んでいる。」

 

「政府機関だけじゃないぞ!大手財閥系企業にはどれほどの通謀者が存在するかわからないほどだ!」

 

「我が国はまさに他国の脅威にさらされているんだ!」

 

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「直哉、通信機が見つかったコインロッカーはどこだ?」

 

「JR大森駅近くのスーパーです!」

 

大森駅!」

 

「指紋データを送ってくれないか!」

「内偵している外務省職員も同じコインロッカーを利用している。」

 

「じゃあその外務省の通謀者が武蔵小杉焼殺事件に関与しているということですか?」

 

「それはまだ何とも言えんが、工作員が身を隠すのに最適だからな、ホームレスは!」

 

「じゃあ養父源太郎は・・・・」

 

「ん?」

 

「あ、いえ。」

つづく