(19)の出演者 ※妄想
向田直哉(刑事):鈴木亮平
迫水拓郎(鑑識官):中村獅童
水越純佳(法医解剖医):中村ゆり
もう何十年も空き家のままになっている養父の家、28年前の事件以来養父源太郎を見た人はいないという聞き込み内容以外はこれといった収穫はなかった。
向田は捜査本部への帰路の途中、なぜあの紙片には養父源太郎の“父”という文字だけが読み取れる痕跡となったのかを頭の中で繰り返し考えていた。
父という字だけを消し忘れたのか?穴のあいた別の紙を重ね名前を書いたが穴の部分に書いた父の字だけが下の紙に残った?拾ったペンの試し書き?無理やりとしか思えないようなことでも向田は可能な限り可能性を考えてみたがどれも合点のいくものはなかった。
高速道路を下り県警本部への下道を走っていた時、この先の道路幅が狭くなる部分にさしかかった。父という字のことを考えながらふと目に入った道路標識にハッとした。
“この標識は道路の幅が狭くなることに注意を促す警戒標識だが、これだけを見せられるとカタカナの“ハ”という字に見えないこともないな”そう思った時、向田にある仮説が浮かんだ。
俺たちが漢字の“父”だと思っていたのはもしかすると父ではなく、何か別の記号かマークのようなものだったのではないか。養父源太郎と書いたとしてそのうちの父という字だけが残るのは逆に不自然ではないか。向田はむしろそう解釈する方が自然な気がした。
捜査本部に戻った向田は正面に置かれたホワイトボードに大きく“父”と書いた。
「みんな! これ何に見える?」
「父という漢字、ですかね・・・・」
「父以外に何に見えるんですか?」
「俺も“父”とは書いたんだが、ちょっと今皆が持っている既成概念一旦取っ払って、とっぴな発想でもいいんで何か別の見方をしてくれないか!」
「とっぴな発想・・・・」
「人の顔? へのへのもへじ的な・・・」
「鎌? 鍬? 無理やりですが・・・」
「ちょっと待ってくれ!鎌、鎌、鎌・・・」
「どこかで目にしたような・・・」
「ソ連の国旗のマークもこんなだったですよね!」
「国旗・・・ 鎌・・・」
「おい! ちょっと前にこんなマークの国旗を見なかったか?」
「警察庁からの通達文!」
「あるか? 通達文!」
「これです!」
「この国章、見ようによったら“父”という漢字に見えないか?」
「世威羅連邦の国章は共産圏がよくつかう労働者が持つ“鎌”が二つ重なっているマークです!」
「これだ! いやいや待て! 似ているというだけで決めつけるのは危険だ!」
「そうですね! テロ支援国家が日本の一焼殺事件に関係しているというのは少々飛躍し過ぎのような・・・」
「あっ!」
「どうした!」
「例の通信機!」
「世威羅連邦の工作員だとしたらつながらないわけでもないです!」
「とっぴでもないってことか・・・・」
「じゃあ養父源太郎はどう説明しますか?」
「養父源太郎のDNAはとれないか?」
「ホームレスのDNA、それに焼死体のDNAを照合できないか?」
「養父源太郎の存在確認だ!」
向田と迫水は品川のホームレスの家(ねぐら)を捜索したが毛髪、爪、皮膚片などは一切残されていなかった。念のため衣類とコップ、箸、スプーンそして空になった酒瓶を科捜研に送った。
また、鎌倉山の養父源太郎宅を家宅捜索しDNA鑑定が可能なものを片っ端から全て押収した。
「水越先生、神奈川県警の向田です。例の焼死体からDAN鑑定することは可能でしょうか?」
「炭化がかなり進んでいますし残った臓器の一部も高温にさらされていますのでね・・・」
「ご承知のとおりDNAは熱に弱く、恐らく破壊されているかと思います。」
「遺体は冷凍保存していますので調べることはできます。」
「わかりました。科捜研にまわしていただけますか!お願いいたします。」
数日後、DNA鑑定の結果が出た。
ホームレスの家から押収したコップ類については一切採取できなかった。鎌倉山の養父宅についても経過年数が長く採取ができなかった。
最後の焼死体からもやはりDNAの採取はできなかった。
「養父源太郎のDNAは一切出てこなかったということか!」
「養父源太郎は本当に存在したんですかね?」
「検事をしてたような人ですよ! 生きていた痕跡がないというのはおかしいですよ!」
「よほど、存在を消したかったのか?」
「それとも・・・・」
「それとも?」
「何らかの事情で存在を自ら消し去った・・・・」
「何らかの事情・・・ですか・・・」
「ちょっと出かけてくる!」
つづく





